「愛人」というと、何だか中年男性の世界のお話みたい。
そう、キャリアウーマンの親友に言ったのが三ヶ月前。
短大を卒業して、十歳年上の上場企業の夫と結婚したのはいいけれど・・。
今ではすっかりセックスレス。何もかもがマンネリ化。
一人息子は留学をすると言っているし、私には何の張り合いも無い毎日の生活。
そんな愚痴を親友に言っていたら、「愛人契約をしたら?」と笑顔ですすめられたのです。
「私が愛人になるのではなく、私が愛人募集するの?」
何だかすごくびっくりした私に、彼女はハッピーメールという出会い系サイトを教えてくれました。
女性は無料だというそのサイトに迷った末アクセス。
勇気を出して、愛人契約を結んでくれる方を募集しました。
思っていたよりも沢山の方から返事があり。
私はその中で一番若い、二十歳になったばかりの男性と会う約束を交わしました。
騙されていたら、どうしよう。
一体どんな男性なのだろう。
息子と大して変わらない男性とデートをするなんて・・お金のつながりを持ち、
愛人契約を結ぶなんて。
ドキドキして待ち合わせ場所で待っていたら、
前方から、とても地味な感じの黒髪の眼鏡の男の子が歩いてきました。
その方が、私の愛人になってくれる男性でした。
歳よりもずっと若く見えるその男性は、高校を卒業後、実家の家計を支える為、
就職したと言います。
その口調は、童顔の外見とは違い、しっかりしていて、見た目は大人なのに、
中身はこどもの夫と比べるとため息が出るほど魅力的でした。
愛人契約を交わしてくれたのは、懐事情の為でもあるみたいでしたが、
実際、私のような大人の女性がとても好きなのだと微笑んでくれました。
彼は母親を知らないので、どうしても年上の女性に心を奪われてしまうと
照れくさそうに話してくれました。
最初は、夫とは一度も行ったことがないようなフルーツパーラーやゲームセンター。
その後はプリクラを撮ったり、恋愛映画を観たり・・。
でも、私は愛人募集をして、彼と愛人契約を結んだのです。
心の充足だけでは、身体は満たされません。
ラブホテルなんて、何年振りでしょうか・・。
彼は、私の前で眼鏡を外し、ストライプのシャツを脱ぎました。
なんて綺麗な身体なのだろう。
若く美しい男性の身体に、心臓が高鳴りました。
私を見つめる瞳は、オレンジの照明の中でキラキラしています。
目が悪い人ってこういう風に見えるものね。そんなことをぼうっと思っていたら、
彼が急に私のシャツを捲り上げました。
その、一見温厚で物静かに見える佇まいとはうらはら、私はあっという間に・・
ただの一人の女にされてしまいました。
「契約を、交わしたのだからね」
彼は、敬語をやめてそう言うと、私を激しく優しく愛撫しました。
「ええ。貴方は私の愛人よ!お金ならあるわ!」
恍惚の表情を恥らうことも忘れ、快楽にあえぎながら、私はひたすら親友に感謝していたのでした。